クロスコントロールネット

クロスコントロールネットの概要、構造とは?

※斜面勾配等により上限に変動があります

クロスコントロールネットの概要

斜面に点在する重量の比較的大きい複数岩塊を一体化し、挙動をまとめて抑制できる落石予防工です。
また、単体の不安定岩塊等において、周囲の地形状況からワイヤロープ掛工での対策が困難な場合に活用できます。

主な対策工と対応可能重量(目安)
除去工 ~7,000kN(約700t)
接着工 -
ロープ掛工 ~500kN(約50t)
ロープ伏工 ~65kN(約6.5t)
クロスコントロールネット ~630kN(約63t)

クロスコントロールネットの構造

滑動荷重を4本のアンカーに分散・均等化させた構造

クロスコントロールネットが採用される顕著な事例!

比較される対策工の概要と課題(落石予防工を主体とした場合)

対策工 ①除去工 ②ワイヤロープ伏工 ③ワイヤロープ掛工 ④接着工
概要 不安定な浮石・転石を直接的に除去する方法。

○不安定な浮石・転石を直接的に除去する方法。
○対象が硬質な場合、静的破砕剤を用いた実績が多い。
△対象が急勾配の斜面上部に有る場合、施工時の落下防止や運搬に掛かる仮設対策が必要である。
△除去した背面が不安定化する恐れもある為、別途処理が必要となる場合がある。

ワイヤロープを斜面に対して密着して張り、アンカーで固定し、点在する複数の不安定な浮石・転石の初期始動を抑える方法。

○ワイヤロープを斜面に対して密着して張り、アンカーで固定し、点在する複数の不安定な浮石・転石の初期始動を抑える方法。
○仮設足場は必要なく使用機材も軽微であり、山間部(奥地)での施工にも適している。
△重量の大きい岩塊に対しては別途対策を併用する必要がある。
△2m四方にアンカーを設置する為、表面剥離等の恐れが有る斜面に対しては別途対策を講じる必要がある。

格子状にしたワイヤロープや数本のワイヤロープを用いて、浮石・転石を覆い(巻付け等)、滑動や転倒を抑止する方法。

○格子状にしたワイヤロープや数本のワイヤロープを用いて、浮石・転石を覆い(巻付け等)、滑動や転倒を抑止する方法。
○横ロープ本数を密に配置する事が出来れば、比較的大きな岩塊への対応も可能である。
△岩塊と周囲の地形状況によってはロープが上手く掛けられず抑止力が期待できない場合がある。
△恒久対策前の暫定構造物として取り扱う事が望ましい。(落石対策便覧P257)

亀裂性崩壊の高い岩塊の亀裂面を基岩盤と特殊接着系モルタルを用いて一体化を図り、安全性を向上させる方法。

○亀裂性崩壊の高い岩塊の亀裂面を基岩盤と特殊接着系モルタルを用いて一体化を図り、安全性を向上させる方法。
○施工後の景観が殆ど変わらない事から、景勝地での実績が多い。
△基岩盤の無い転石には適さない。
△亀裂幅が小さい場合、目地工は施工可能であるが注入工が困難となる。

※上記は、クロスコントロールネットを比較検討する場合の主な事例です。

対策工① 課題

対策工① 課題

斜面が急峻で上方に有る場合、施工時の安全施工が困難である。浮石は除去後の背面が不安定化する恐れもある為、別途処理が必要となる場合がある。

解決策

解決策

クロスコントロールネットは対象岩塊を直接吊上げる為、斜面が急峻でも対処が可能、振動も少なく安全施工も可能である。

対策工② 課題

対策工② 課題

2m四方内で許容荷重を超える岩塊が有る場合は他工法と併用し対策が必要である。アンカーの中抜けに注意が必要である。

解決策

解決策

岩塊毎にアンカーを打設し、吊上げる為、岩塊群に対応が可能である。対策②のアンカーが打設出来ない場合も適用できる。

対策工③ 課題

対策工② 課題

現地条件によりワイヤロープの設置が困難となり、抑止力が期待できない場合がある。恒久対策前の暫定構造物として取り扱う事が望ましい。

解決策

解決策

クロスコントロールネットは対象岩塊を直接吊上げる為、現地条件の制約が比較的少ない。恒久対策の永久構造物として取り扱われる。

対策工② 課題

対策工② 課題

基岩盤の無い転石は適用が困難である。

解決策

解決策

対策工③で対策出来ない転石は、クロスコントロールネットを適用する。

クロスコントロールネットの耐久性は?

部材規格と耐用年数

  • 使用される部材の防蝕仕様は全て溶融亜鉛めっきを標準としています。
  • 耐用年数の判定は郊外地区(田園地帯)において概ね約50~70年程度が目安となります。

計算式:耐用年数=亜鉛付着量(g/m2)÷腐食速度(g/m2/年)×0.9

  • 海岸地帯等の腐食速度の大きい地域においてはアルミ亜鉛合金めっきを選択することで、上記と同程度の耐用年数を確保することが可能です。
  • 景観保全を考慮しなければならない箇所において着色仕様を選択することも可能です。
    ※一部、着色できない部材があります。

溶融亜鉛めっき使用環境別耐用年数

溶融亜鉛めっき使用環境別耐用年数

亜鉛アルミニウム合金めっきの耐食性

亜鉛アルミニウム合金めっきの耐食性や協会規格については 以下を参照してください。

クロスコントロールネット 施工手順

主な仮設備

施工機材・使用部材ともに軽量の為、現場内運搬にはモノレールや簡易ケーブルクレーン等が主体となります。

標準的な施工手順フローチャート

施工範囲の測量

設計図書に基づいて、ロックアンカー・クロスティングポイントの設置位置、補助ワイヤロープ、吊りワイヤロープの数量を確認します。
対象岩塊や斜面形状に相違がある場合は、実測値より最適な数量を再度算出します。

ロックアンカー設置

削岩機(人力又は機械)を用い、地盤状況に応じて自穿孔(SDタイプ)他穿孔(PBタイプ)を使用します。
グラウト注入~養生期間を置いてアンカー確認試験を行った後、アンカー連結金具と分散金具を取付けます。

補助ワイヤロープ組立

(1)アンカー連結金具に補助ワイヤロープを設置する。
(2)アンカー連結金具に接続した補助ワイヤロープから、縦・横それぞれ1.0m間隔を標準に補助ワイヤロープを設置する。
   補助ワイヤロープの交点は、クロスティングポイント又はエックスクリップで結合する。

クロスティングポイント組立

ミニアンカーの削孔はハンマドリルと用い、孔壁清掃を行った後、樹脂系接着剤を注入し、
ミニアンカーを挿入します。接着剤が硬貨した後、クロスティングポイントを取付けます。

集積金具設置

集積金具を1スパン内の中心部分に仮設置する。

吊りワイヤロープ組立

(1)上部2箇所のアンカー連結金具と制御金具を、上部吊りワイヤロープで接続します。
(2)下部箇所のアンカーと制御金具を、下部吊りワイヤロープで接続します。

制御金具設置

上部吊りワイヤロープの端部を制御金具を介して接続する。インパクトレンチにて仮締めを行った後、トルクレンチで所定の軸力まで締付ける。

施工性および維持管理性

◎モノレール又は簡易ケーブルクレーンよる運搬が可能であり、その他資機材も軽量の為、基本的にはロープ足場
による人力作業が主たる施工手段です。

◎適用できる範囲
・1スパン当りの対応可能重量は斜面勾配により変動しますが、最大で約630kNが目安となります。

◎適用できない範囲
・ロックアンカーの定着が見込めない箇所(湧水等)。

◎基本的には必要有りませんが、自社にて以下の項目について確認しています。
チェック項目 =「対象岩塊の状況」・「周囲の地形状況」・「ワイヤロープの緩み」・「部材の破損等」